wagamamakacchan’s blog

Music washes away the dust of every life. =Art Blakey=

ABBEY LINCOLN / THAT'S HIM!

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1. Strong Man
2. Happiness Is A Thing Called Joe
3. My Man
4. Tender As A Rose
5. That's Him
6. I Must Have That Man
7. I Must Have That Man (Take 3)
8. Porgy
9. Porgy (Take 1)
10. When A Woman Loves A Man
11. Don't Explain
 
<Personnel>
Abbey Lincoln  (vocal)
Kenny Dorham  (trumpet)
Sonny Rollins  (tenor sax)
Wynton Kelly  (piano)
Paul Chambers  (bass)
Max Roach  (drums)
 
Recorded in New York on October 28, 1957.
 
 
私はこれまでアビー・リンカーンのCDは持っていなかったが、つい最近新宿のディスクユニオンを覗いた際に、いわゆる衝動買いで2枚のアルバムを購入してしまった(´∀`*)
 
衝動買いとは言っても、その理由は二つある。一つは、何といってもジャケットの魅力、そして二つ目が豪華なサイドメン(失礼)の魅力だ!!
 
 
今回はタイトル「ザッツ・ヒム!」とあるように男を想う女の気持ちを切々と歌っているアビー・リンカーンを取り上げてみた。
 
 
ウィキペディアによれば、アビー・リンカーンビリー・ホリデイを敬愛しており、ビリーの後継者とも言われていたという。
 
確かにこのCDにはその憂いを秘めた歌い方、声などビリー・ホリデイにそっくりな場面も顔を覗かせる。また歌うというよりも語るとでも表現したくなる魅力も網羅されている。
 
また、さらに何といっても素晴らしいサイドメン(失礼)がバッキングでアビーをフォローしているのが堪らなく嬉しい(´∀`*)
 
 
当時のリヴァーサイドを代表するプレイヤー達、ケニー・ドーハムソニー・ロリンズウィントン・ケリーポール・チェンバース、それに一時期アビーと結婚していたドラムスのマックス・ローチというそうそうたる顔ぶれの演奏だけに、ダメであるはずがない?っと自分で決めつけている?
 
 
さて、一曲目の「STRONG MAN」だが、タイトルを表すかのようなロリンズの野太いテナーイントロからアビーのリリカルな歌へと続く。途中からドーハムの静かで柔らかなミュートがアビーの歌に絡んでアビーを盛り上げる。まるで会話をしているようだ? 
 
次にロリンズのソロとなるが、その堂々たる吹きっぷりには驚かされる。静けさの中に同居するその風格は、聴手を魅了し癒しさえも感じてしまう。やはり大御所のテナーは安心して聴けるね?
 
 
二曲目の「HAPPINESS IS A THING CALLED JOE」はアビーの静かな歌い出しで始まるが、このようなバラードは得意としていたのだろう。他の曲と比べてやや幸せな気分を、持ち前の伸びのある高いトーンで表現しているアビーの歌い方で良くわかる。
また、流れるようなウィントン・ケリーのピアノも、静かながらしっかりとバックに徹しており、
引き続きロリンズのテナーソロとなるや、リズムセクションも絡まってくると何処かノスタルジーを感じてしまう。
 
 
三曲目の「MY MAN」はケリーのウォルドロン張りの憂いを秘めたピアノから始まるが、全編に渡りアビーの哀愁を帯びた歌声で終始する。
 
 
四曲目の「TENDER AS A ROSE」は歌というよりも詩を読んでいるという歌い方だが、こんな表現方法もあるんだと改めて感心させられた一曲だ。
 
 
五曲目は本アルバムのタイトルとなっている曲でケリーの飛び跳ねるようなイントロで始まり、アビーの歌へとつながるが、聴かせどころの歌詞「THAT'S HIM」が出ると同時に静かなロリンズのテナーが絡んでアビーとの会話が始まる。
 
程なくしてロリンズの代わりにドーハムの泣くように絞り出すミュートが絡み出すと最高潮の盛り上がりを示し、WONDERFUL WORLD、 WONDERFUL YOUと締めくくる。
 
 
六曲目、七曲目は「I MUST HAVE THAT MAN」のオルターネート曲が収められているが、面白い始まりを聴かせてくれている。
 
アビーの声に呼応するかのようにローチのドラムが弾ける。まるで夫婦の会話を楽しんでいるようだ。やっと控えめだったローチのドラムが表面に出てきた感があり、後半に期待が持てる。
 
それもそのはず、このアルバムで唯一アップテンポの演奏を楽しんでいるのだ。
 
ローチの鋭いドラミングにドーハムのアップテンポなトランペットが、引き続きロリンズのテナーが炸裂した後へ負けじとアビーが割って入る。
 
このアルバムで一番の聴かせどころと言って良いだろう(´∀`*)
 
しかも、二曲ともまるっきり同じでないところがまたよい。これはじっくりと聴き比べてみたいものだ。
 
 
八曲目、九曲目もまた「PORGY」のオルターネート曲が収められているが、こちらは一転静かなバラード曲で、アビーの歌声を挟んでドーハムのミュートとロリンズのテナーが楽しめる。
 
 
十曲目の「WHEN A WOMAN LOVES A MAN」はやはり恋の歌らしく、情感たっぷりなアビーの歌声にバラードの得意なケリーのピアノ、ロリンズのうねるようなテナーがからみ、ドーハムのミュートが静かに割って入り盛り上がりを見せ後エンディングとなる。
 
 
このアルバム最後の曲となる「DON'T EXPLAIN」はビリー・ホリデイの作った愛唱歌だが、アビーは最後の曲に相応しい素晴らしい表現で切々と歌っている。ドーハムの哀愁を帯びたミュートもロリンズのテナーも泣いているのか、心無しか寂しさを隠しきれないアビーを支えている。