1. スクラップル・フロム・ジ・アップル | |
2. ウィロー・ウィープ・フォー・ミー | |
3. ブロードウェイ | |
4. ステアウェイ・トゥ・ザ・スターズ | |
5. チュニジアの夜 | |
6. アワ・ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ | |
7. ライク・サムワン・イン・ラヴ |
<パーソネル>
デクスター・ゴードン (ts)
バド・パウエル (p)
ピエール・ミシュロ (b)
ケニー・クラーク (ds)
1963年5月パリにて録音
早くからジャズ・ジャイアンツ達(チャーリー・パーカー、レスター・ヤング、ファッツ・ナヴァロ、ワーデル・グレイ、バド・パウエル)と共演したゴードンは、40年代にプロとしての活動を始めるが、50年代後半は麻薬の為に不遇の時代を過ごしたようだ。
1960年代初頭から1976年にかけて、フランスやデンマークを拠点に活動し、再び音楽活動が軌道に乗った時期の1963年にバド・パウエルらと共にパリで録音し、ブルーノートから発表したアルバムが、今回の『アワ・マン・イン・パリ』である。
故にこのアルバム『アワ・マン・イン・パリ』は、麻薬という不遇の時代から抜け出し、約10年ぶりにパリ在住の旧友バド・パウエルと再会し共演した歴史的名盤であるとも言える。
また、1986年には映画『ラウンド・ミッドナイト』で主役を務め、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。
お恥ずかしいことに、私はこのバド・パウエルを取り扱った映画が、デクスター・ゴードン主演の『ラウンド・ミッドナイト』だと云うことをつい最近知ったものだ。
しかしながら、このデクスター・ゴードンというミュージシャンは実に煙草と酒が似合う男だ。
よく世間では一般的にゴードンを「野太いテナーを自由奔放に豪快に吹きまくる」と評しているが、この『ラウンド・ミッドナイト』を観る限りでは、どこかか弱く繊細でかつおおらかにやさしい表情を見せている。これが彼本来の真の姿ではないか?
それはこのアルバムの一曲目の「スクラップル・フロム・ジ・アップル 」を聴いてみると分かる。最初はそこにソニー・ロリンズがいるのではないかという錯覚に襲われたが、まさにそこでブローしているのはテナーのデクスター・ゴードンである。
ロリンズはゴードンから強い影響を受けたと言われているが、晩年には逆にゴードンがロリンズのスタイルを取り入れたとも云われているように、何かを苦しみ自信を無くしさまよっていたように思える。
これが本当のミュージシャンの苦しみだったのか誰も知る由は無い。