wagamamakacchan’s blog

Music washes away the dust of every life. =Art Blakey=

悲しみを乗り越えさせる極意 - 日経ビジネス Associe 2006.06.06号から

日経ビジネスAssocie2006.06.06号で感銘した記事があったのでご披露する。

新連載「成功格言」の中で、マックス桐島氏が書いている記事だったが、タイトル「悲しみを乗り越えさせる極意」としてあった。一部を抜粋する。

If you cry because
the sun has gone out of
your life, your tears will
prevent you from seeing
the stars.

父子2代にわたって不慮の死を遂げたブルース・リーブランドン・リー
ブランドンは「クロウ」の撮影セットで、通常ならば考えられないような拳銃の暴発により事故死した。
(中略)
そして、結婚を間近に控えていたブランドンのガールフレンド、キャレン
(中略)
ブランドン・リーの葬式の直後、ブルースの夫人リンダの提案で、参加した者のうちの有志で食事会に出かけた。出向いた先は、ロスアンゼルスのチャイナタウンにある、とあるレストラン。
丸いテーブルにジェフと隣り合わせで座った僕は、沈痛な面持ちの周囲を見回した。放心状態のようなうつろな瞳で遠くを見つめるキャレンの姿が、いたたまれなかった。

すると、その悲痛な沈黙を破るかのように、リンダがキャレンに話しかけた。
「ブランドンは今きっと、あたかも自分が私たちと一緒にいるかのように振る舞ってほしいと思っているわ」

キャレンは大粒の涙を流しながら小声でつぶやいた。「でも彼はもういない・・・。私の太陽そのもののような存在だった彼がいない人生なんて、真っ暗闇のよう・・・」

セットでの安全管理を怠ったとして、後日、「クロウ」を製作したスタジオや、スタントの責任者だったジェフを含む撮影スタッフたちを相手取って訴訟を起こすリンダが、最愛の夫と息子に先立たれた人とは思えないほど強靭な表情で、キャレンの背中に手を回した。

「太陽がなくなってしまったと悲しみ続けていたら、美しい夜空の星が涙で見えないわ」

生活の拠点だった米国・ロサンゼルスではなく、香港の恋人宅で、腹上死の状態で客死したとされるブルース。その知らせを聞いた時にリンダが受けたショックは、周囲には想像し難いものがあったに違いない。その悲劇を自ら乗り越えてきた人物だからこそ言える激励の言葉である。

リンダは、ブランドンの死を通じて、生き残った人々が彼の生き様や夢を継承してゆくことの大切さを、キャレンだけではなく、その場に居合わせた皆に伝えたかったのかもしれない。

生き別れ、離婚、死別と形はそれぞれ異なっても、別れが「太陽が沈む」一瞬であることには変わりはない。そして、別れが突然であればあるほど、それに伴う悲しみや辛さは何倍にも増し、気持ちは否も応もなく深く沈みこんでしまうものだ。

しかし、太陽が沈んだ後でしか見られない、夜空に輝く星座の美しさがあることを、僕たちは忘れてはならないと思う。

志半ばで逝った最愛の人、家族、友人・・・そうした人々への最高のはなむけは、生き残った人々が、その人の分まで輝いて生き続けることにあるような気がする。

「あなたには、日没後の美しい星明りが見えていますか?」